ナナ・ヴァン
ロワール地方は、トゥール市からナント市に向かうちょうどあいだの町シャトー・デュ・ロワールの手前を、東に5 km ほど、川に沿った農道を通り過ぎると、ナタリー・ゴビシェールのドメーヌがあるマルソン村に着く。畑の総面積は 9 ha で、ドメーヌのまわり半径 5 km 以内に複数点在し、大半が小高い丘の南向きの斜面に面している。土壌は、表面が主に粘土質と顆粒状のシレックスに覆われ、その土壌の下の部分(0.5 m〜1.8 m)は石灰質、さらにその下は Perrons または Pangee と呼ばれる大昔まだ地球の大陸がひとつだった時(パンゲア大陸)の原岩盤が存在し、三層に折り重なっている。気候は穏やかで夏は暖かく、秋から冬春にかけてはロワール川(支流)と地上の温暖差で朝夕はしばしば深い霧に覆われ、その霧がブドウの貴腐化などの環境条件に影響を与える。また、ナナ・ヴァンのネゴスは、ラングドック地方のベジエ近郊北部の小さな村アスピランに醸造所があり、主にワイン生産者エミール・レディアのブドウを買いワインを仕込んでいる。(エミール・レディアはロワールにも畑があり、そこからも時々ブドウを買っている)。夏の乾燥が著しい地中海性気候とタラモンターニュという季節風が、ブドウのカビや病気を防ぐ格好の条件をつくり出す。さらに、エミールの持つ畑は galets roules と呼ばれる力強いワインを生み出す楕円形の石の区画と旧火山からくる繊細なワインを生み出す玄武岩の区画の 2 つのテロワールがあり、それぞれ全く異なるワインの個性を生み出す。
現オーナーである、ナタリー・ゴビシェールは 2001 年にジュネーブの試飲会でクリスチャン・ショサールに出会う前は、スイスで劇団の女優をしていた。その当時から一般消費者としてヴァン・ナチュールに興味があり、特にクリスチャンのワインがお気に入りだった。ジュネーブの試飲会でクリスチャンに猛烈にアタックされたナタリーは、そのままクリスチャンと一緒にジャニエールに居を構えることを決意する。2002 年にドメーヌ・ル・ブリゾーを立ち上げ、そして 2006 年にはナタリーの愛称をから取ったナナ(ヴァン・エ・カンパニー)というネゴシアンも立ち上げる。当時ナタリーは主にドメーヌの書類関係とネゴシアンのワインの醸造に少しだけ携わっていた。だが、2010 年に体調を崩したクリスチャンが末期ガンを患っていることを知って以降、畑から醸造までクリスチャンの行っていた仕事のほとんどをナタリーが代わりに行うことになった。そして、2 年間畑と醸造に取り組んで仕事が慣れてきた頃、突然の不幸が訪れた。2012 年の 9 月、不慮の事故によりクリスチャンが亡くなった。クリスチャンの亡き後ナタリーはそのままドメーヌを引き継いだ。2015 年、元々友人だったワイン生産者エミール・レディアとネゴシアンの買いブドウを通じて懇意になり再婚を果たす。それを機に、ネゴシアンの醸造所をラングドックのエミール・レディア宅に移し、ナナ・ヴァンはラングドック、そしてドメーヌ・ル・ブリゾーはロワールで仕込むという 2 つの場所を常に行き来しながらドメーヌとネゴシアンを管理している。
現在、ナタリーは 9 ha のドメーヌの畑と醸造+ネゴスワインの醸造の 2 つを管理している。2015 年にロワールからラングドックに引っ越して以来、生活居住はラングドックに移ったが、ワインの状態を確認するためにロワールのドメーヌには毎月 3 回以上出向いている。ドメーヌの畑は、現在常時管理する従業員 1 人と旧カーヴを借りているワイン生産者カップルが賃貸の代わりに畑仕事に従事していて、離れていても日々常に連絡を取り合いながらお互いの意思疎通を図っている。彼女の所有するブドウ品種はシュナン、シャルドネ、ピノドニス、ガメイ、コー。ネゴシアンはテレット、サンソー、クレレット、シュナンを夫のエミール・レディアから買っている。ワインのスタイルは、ドメーヌはクリスチャンの遺志を受け継ぎテロワールを重視したクリスチャンの味わい、そしてネゴシアンはナタリー自身のキャラクターを目指している。
スゼット!(白)
前年までテレブラン(Terret:別称テレット)とクレレットのアッサンブラージュだったが、より酸にキレのある味わいに仕上げるために、パートナーのエミールの所有するヴィエーユ・ヴィーニュのカリニャンブランを今回クレレットの代わりに使用した。ナタリー曰く、カリニャンブランは晩熟品種で、グルナッシュブランのようなふくよかと酸を兼ね備えた骨格のある味わいが特徴とのこと。彼女は今回カリニャンブランの骨格は全く求めず、逆に早めに収穫することでカリニャンブランの持つ酸を引き出した。出来上がったワインは、まるで搾りたてのグレープフルーツを飲んでいるかのような柑橘系の酸と苦みが心地よいフレッシュな味わいに仕上がっている!よく酸を意識した南のライトな白ワインにありがちな味わいのアンバランスさは全くなく、ブラインドだとまるでロワールやアルザス北の白を彷彿させる!このような軽快で柑橘豊かな涼しいワインに仕上げるセンスはさすがナタリー、もう明らかに南の生産者では群を抜いている!
テレブラン50%、カリニャンブラン50%。収穫日は9月15日。収量は45hL/ha。2022年は、より酸味を効かせるためにアッサンブラージュをClairette(クレレット)からCarignan blanc(カリニャンブラン)に変更した!Suzetteはフランスの昔の女性の名前で、テレブラン(Terret:テレット)に掛けている!SO2は瓶詰め前に20 mg/L添加。軽くフィルター有。
少し濁りのある淡いレモンイエロー。熟したグレープフルーツ、白桃、梨のコンポート、ソーダー水の香り。ワインはフレッシュでみずみずしく、搾りたてのグレープフルーツのような柑橘のエキスに 塩気のあるミネラルとタイトな酸が溶け込む!(インポーターさん資料から抜粋)