ヴィユー・シャトー・セルタン
ヴィユー・シャトー・セルタンのオーナーであるティアンポン家にとって、このポムロールきっての有名なワインは誇りでもあり、歓びでもある。19世紀から20世紀初めにかけて、ヴィユー・シャトー・セルタンが生み出すワインは最上のポムロールと評されていた。しかし第二次世界大戦後、名声はペトリュスに奪われてしまう。 2つのワインは、両極端といっていいほど違っている。ヴィユー・シャトー・セルタンのスタイルや複雑さは、カベルネ・フランを高い割合で使うことから生まれている。それに対してペトリュスは、ほぼ100%がメルロである。ブドウ畑は丘陵の中央部にあり、周囲を取り囲むのは、ほとんどがこのアペラシオンの一流シャトー、すなわちラフルール、セルタン・ド・メ、ラ・コンセイヤント、レヴァンジル、プティ・ヴィラージュ、ペトリュスなどである。土質は砂礫質で、下層土が鉄分の豊富な粘土質である。このブドウ畑からできるワインには、たとえばペトリュスのようにメルロを主体にしたワインが持つ力強さはないが、メドックの一流ワインを思わせる芳香とエレガンスに恵まれることがしばしばである。
ヴィユー・シャトー・セルタンのシェを訪れてわかるのは、伝統に対する健全な尊敬の態度である。戦後から現在までの大半の期間、ヴィユー・シャトー・セルタンを手がけてきたのはレオン・ティアンポンだったが、1985年の彼の死後、息子のアレクサンドルがシャトーの経営を引き継いだ。彼が修業したのはラ・ガフリエールというサン=テミリオンのシャトーである。若くて内気なアレクサンドルがシャトーを継いだ時、古参は彼の経験不足を笑ったが、彼はめきめきと頭角を現し、近くのシャトー・ペトリュスでクリスティアン・ムエックスが実践している成長期剪定と樽でのマロラクティック醗酵をメルロの為に導入した。
ヴィユー・シャトー・セルタンは歴史的に秀逸との評価を得ているため、高価だ。(『ボルドー第4版』から抜粋)
ポムロールにしては土壌に粘土質が少なく、力強いシャトー・ペトリュスなどと比べると、優雅なイメージがあるといわれています。
当主アレクサンドル・ティアンポン氏の信念も「コンクールなどで向こう受けするワインを造るのではなく、あくまでもテロワールを素直に反映し、食卓で楽しんでもらえるワインを造りたい」とのこと。