ドメーヌ・デュ・パストル
パストルという名前はプロヴァンサル語で「羊飼い」。羊飼いだった当主ローランの祖父へのオマージュで名付けられています。「羊飼いは群れを率いるよりもその群れに従うものだ」ラングドック出身の作家マックス・ルーケットの言葉です。ワイン生産者としての自分の仕事への取り組み方を見事に表している。とローラン。「私の仕事は、それぞれの区画の葡萄に耳を傾け、可能な限りのサポートを与え、調和を促し、最高の果実を実らせることである。」
南ローヌ、ヴァントゥーにドメーヌを構える当主ローラン・ロジエールは元々エンデューロのプロライダーでした。実家が所有する26haもの土地で家族が葡萄以外にも果物やオリーヴ、動物など、いわゆるポリカルチャーを行っています。自身もプロライダーを引退し2005年に9haを譲り受け農業に加わります。2005年から2007年までは育てた葡萄を農協に売っていました。ワイン造りのために本格的に葡萄栽培を始めたのは2008年からで、開始当時から畑はビオロジックで行っています。2010年にカーヴを建設し2015年からワイン造り始めて2018年にファーストヴィンテージをリリース。完全に亜硫酸無添加で造れた2022年からSOUが輸入を開始します。
※エンデューロ:林道などの未舗装の自然道を走るレースのこと。 オフロードバイクを使った人命救助が発展してできたスポーツ。
※ポリカルチャー:自然の生態系の多様性を模倣して、複数の種が同時に同じ場所で栽培される農業の一形態。
ローラン自身が葡萄栽培を始めるとき、初めから畑は完全なビオロジックにしようと決めていた。しかし醸造は初めから自然な造りとはいかなかった。7年目となる2022年に完全な「自然な造り」を実現した。この年から全房によるマセラシオン・カルボニックに仕込みを変更したのは、バイク仲間のフレデリック・コサールからのアドバイスによるものだった。さらにノンフィルター、SO2無添加にしたが、全く危うさが無い。大好きなバイクもプロになってしまうほど突き詰めてしまうストイックな性格はワイン造りにも影響しているようだ。とにかく所作ひとつひとつが綺麗できちんとしている。几帳面な性格と手間を惜しまない精神力、鍛え抜かれた身体の強さは全ての過程で妥協を許さないことに繋がっている。
ワイン生産者としては大先輩であるフレデリックと「Amis Comme Cochons」(遊び仲間)だよと言えるほど対等な友人でいられるのは、彼からのバイク仲間としての尊敬があるからだろう。栽培においてもフレデリックから買い葡萄のオファーを受けるほど厚い信頼を得ている。最近は自身のドメーヌに葡萄を優先するためフレデリックには近隣の信頼できる別の栽培者を紹介している。カーヴを建築したのはフレデリックのカーヴを建てた建築家と同じ建築家だ。2010年に建設をしてから少しずつ必要なマテリアルを揃え、2022年には増設をした。良いワインは良いブドウと畑で造られるという原則に基づき、収穫を尊重し、ブドウがその力を十分に発揮できるような機能的なセラーを設計した。断熱性に優れ、土着酵母のみを使用する発酵に、最適な温度管理をかなえる冷蔵装置を備える。温度管理を徹底するために醸造にはステンレスタンクを使用している。非の打ちどころのない衛生管理のなか、ワインは一切の添加物を加えることなく醸造・熟成される。
祖父が土地を手に入れたのは1968年。その頃に植えられたカリニャン、サンソー、グルナッシュ、シラー、グルナッシュ・ブラン、ユニ・ブランの畑にはテロワールが持つポテンシャルを大いに感じたがそれから37年後、畑を引き継いだローランは、樹齢55年の古木を残し、ストレスを与えないよう、ブドウの成長を止めずに自然に生育させるため、大規模な仕立て直しを行った。
彼の哲学は、"トリック "を一切使わず、亜硫酸もほとんど使用しない、テロワール主導の本物のワインを造ること。最近ではビオディナミ農法に移行しつつある有機農法で、耕作、処理、すべての手作業(剪定、除芽、葉摘み、棚仕立て、収穫)は月の暦に従って行っている。厳しい剪定によって、ブドウの木とテロワールとの完璧なバランスを保つことが重要だと考える。手摘みで収穫をし、良いものだけを残すために細心の注意を払って選別をする。フェノールが熟した状態で収穫することに拘っているため、3回に分けて収穫する区画もある。2008年の初ヴィンテージ以来、ブドウの木とテロワールに耳を傾ける”職人的生産者であること”を大切にしてきた。
そんな彼の野望はただ1つ、「ワインを手に取ったすべての人に最大限の喜びと感動を与える」こと。
キュヴェ・カリニャン
カリニャン100%(樹齢50年)。
紫がかったルビー色。ブルーベリージャム、ハイビスカス、甘やかな香りが全体を支配している。アタックからエレガントで、果実味も酸も綺麗に溶け込んでいる。余韻も長く、完成度の高さを感じる。(インポーターさん資料から抜粋)